星屑ロジック













細く開いたドアから覗いた部屋には月明かりだけが満ちていた。
すべてのものが青白く光り、カーテンのついていない窓の隙間から流れ込む風は夜の匂いを運んで来た。
彼は一人、窓辺に座り込み固く目を閉じて。
まるで祈りを捧げるように。
ここから見るその姿は暗闇の中浮かび上がり、いっそ不気味でさえある。
「               」
呟く声は誰かに届いているのか、どこかに届いているのか。
聞いて欲しいのか、聞かれたくないのか。
ベッドから半身を起こしぼさぼさの髪をかきあげる。
声をかけるべきか悩んでいると赤い髪の彼が振り向いた。
赤は黒になり闇に溶けた。
「起こしたか?」
「いんや。てか、お前はこんな夜中に窓開けて何してんだよ。」
片膝を立てて座ったままのアヤの隣に言葉どうり這いずって行き腰をおろした。
腰に引っかかったままだった毛布が胡坐を掻いた足に絡まった。
Tシャツと短パンから出ているむき出しの手足が寒い。
「別に。少し、目が覚めただけだ。」
「いやな、夢でも見たか?」
こんな仕事をしているから夢を見ることは滅多にないけれど、
ときどき見る夢は現実を引きずっているものが多い。
夢の中でまでつきつけられる現実に、安眠は妨げられる。
そのまま眠りをむさぼれるほど神経は強くなく、
だからといって自分を責めたりするほど良心的でもない。
ただ、待つしかないのだ。
何時に目覚めてしまっても、静かに、朝が来るのを待つことしか。
「・・・それは、お前じゃないのか?」
「・・・・・・・。」
ストレートに投げかけられた問いかけは、深く、深く、胸を抉った。
それは、図星だ。
「・・・人肌が、恋しくなったんだろう?」
無表情で紡がれるそれも、真実だ。
ひた、とむけられるアヤの視線はケンの瞳にしっかりと絡みつき動きを封じる。
まるで内側から溢れ出る真実をすくい上げようとするかのように。
少しのプライドも建前も崩され、晒されるのは醜い自分自身。




さあ、お嬢さん この胸へ




ゆっくりと伸ばされた手を、断る理由はなかった。
「ああ。その通りだ、アヤ。」
否定の言葉は二人の間では意味を成さない。
だから、この夜だけは
抱きついて、甘えて、縋って、弱音を吐かせて。
そして、この夜だけは
抱きしめて、甘えさせて、優しく囁いて、慰めて。
星が綺麗な夜だから。








願っていたのは、君が夢に囚われて涙を流さずに眠れるように。












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