呼吸










体温










分け合う










時間



















特に、何をするでもなく
ただ二人で、同じ空間に居る。
それだけで満たされる、心。
同じ遺伝子で作られ、同じ血が流れているのに
なぜだろう?
こんなにも、どきどきして
こんなにも、ふわふわする。
これが、にーちゃんの言う「好き」なんだろうか。










音羽が捲る雑誌の音。
コーヒーの湯気越しに、回転イスに座って見つめる。
視線には気づかず、ベットにうつ伏せて雑誌を見続ける音羽。
一口、コーヒーを飲んだ。
目を瞑ると、コーヒーが身体中に広がった。
あぁ。
こんなにも穏やかな日が来るなんて。
こんなにも愛しい日々が来るなんて。
あの頃の自分は、考えもしなかった。
馬鹿な、子供のままだったから。










「にーちゃん。」
いつの間にか雑誌を見終えていた音羽が、こっちを見ていた。
大きい瞳が、くるくるしている。
どこか子犬を思わせるその目は、はっきり言って可愛い。
そして、嘘をついてもすべて見透かされそうな
本当のことしか言えない目だ。
「なんだ?」
出来る限りのやさしい声で、
出来る限りの笑顔で答える。
表わせない気持ちを伝えるために。
「呼んでみただけー。」
うつ伏せの体勢から起き上がった音羽は、
満面の笑顔で俺を見た。










ふと、呼んでみたくなる。
それは、欲望に近いのかもしれない。
呼んだら、必ず返してくれるのを知っている。
呼んだら、必ずやさしい笑顔と声で俺を見てくれるのを知っている。
呼んだだけだと言ったら、包み込むような笑顔をするのを知っている。
そのたびに、
どきどきと
ふわふわと
身体が感じる。
この気持ちは、
きっと、にーちゃんと同じ「好き」だと確信を持って言える。




















呼吸も










体温も










時間さえも










二人で過ごしたい

















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