泣き出しそうな夜、君の声を聞いた気がした。















光なんて一筋も入らない薄暗い部屋で。
聞こえるのは自分の鼓動か、相手のものか。
吐く息も混ざり合う、生温い温度の中。
真っ白なシーツに音羽と二人、包まって一体どれくらい経ったのか。
柚羽の時間の感覚はとっくに失われていた。

(音羽、泣きそう・・・)

柚羽の腕を枕にして寝ている音羽は、幼い顔を苦しそうに歪めている。
ぎゅっと、きつく閉じている目蓋に指先でそっと触れた。

(目・・・・覚ませ)

指はそのまま頬に移動し。
やわらかい感触をつまんでみた。
微かに、音羽の身体が震えた。
目蓋が開く。

「起きたか?」

「・・・にいちゃん?」

まだ眠たそうに瞬きしている瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
起き抜けだからか、それとも―。




「夢、見てた。」

「夢?」

音羽の声は起きたばかりで、いつもよりゆっくりで丸い。
小さなころの甘えてきた姿に似ている。
知らず、声が優しくなる。

「俺もにいちゃんもちっちゃいころの夢。」

「どんな?」

「雨が降ってて、俺が泣いてて、にいちゃんが隣にいる夢。」

「ああ。そういえば、そんなこともあったな。」

窓を打つ雨の音を、音羽は酷く怖がった。
特に、夜は。
どこが怖いのかはわからなかったけれど、音羽は本当に怖がっていて。
小さな身体は震えているし、大きな瞳からはぼろぼろと涙が流れているし。
それをほっとけるはずもなく。
縋りついてくる身体を抱きしめていた。






「にいちゃん。もう一回、寝よ?」

促すように、音羽の手が俺の胸元のTシャツを引っ張る。
俺の手は音羽の背中に。
ポンポン、と二回たたいて。

「・・・・だな。」










目を閉じた。

















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