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酷く不安定だ。 この足元の砂に埋まっていくように、とても不確かだと思う。 絶妙なバランスでないと零れ落ちてしまう。力加減も気をつけなければいけない。 粉々に崩れてしまうから。 「隊長」 目の前のその背中に触れるのは、簡単だ。 ただこの手を伸ばせばいい。そうすれば待つこともなく、振り向かせることができる。 けれど、それができない。 「隊長」 待っても振り返らないその背中に、もう一度強く呼んだ。 やっとこっちを見た瞳は、相変わらずなにを考えているのかまったく読めない。 だいたいこの人はなにをしているんだ。 いや、それはわかるがわかっているが故に不自然なのだ。もうすぐ夜になるぞ。 「なにしてんすか」 「見てわからんか」 呆れたような声に少しむっとする。 「あんたのその行動ぐらいわかりますよ。ただ、不自然だから聞いたんです」 本当にこの人とは相性が悪い。というより、根本部分が違いすぎる気がする。 これ見よがしに、大きな溜息を吐く。 「花、見てるだけにしては空気おかしいですよ」 「・・・・・・そうか」 不意をつかれたように少し目を見開く。けどすぐにいつもの無表情に戻った。今の間はなんだ。 視線が外され、また花へと向けられる。 その時に、あっ、と感じる。 自分とこの人は微妙なバランスの上にいるのだと。 相手の問いを許さず、また自分も問いかけない。見えない線引き。 きっと俺達の周りには幾何学模様がいくつも描かれていることだろう。 「物騒っすね」 呟いて空を見上げる。もう夏だ。 夜になるまでの時間が長く、そして昼間との曖昧な空の色。 ああ、これも不安定だ。 どこまでも続いているくせに見えない境界線。 混ざってなくなるのは、夜か昼か。本当は零れ落ちているのか、流れているのか。 「少し、思い出していた」 何のことかと黒い瞳を見つめる。 一瞬、その瞳に光がはしった気がした。 「あのときのお前を」 「あー」 隊長と俺が斬りあったときの、と続けて無言で先を促す。 「このような色だった」 あのときのお前は。 静かに吐き出された言葉は案外近くで響いて、鼓膜を振るわせた。 いつのまにこんなに距離が短くなっていたのか。 するり、と頬を撫ぜられる。 「酷いことをした」 下ろしていた髪ごと、強い力で引き寄せられる。 目線を下におろしたそのとき、頭を押し付けられそして感じる何かが触れた感覚。 ぱちりと瞬きをする。 今のはなにか、尋ねようと見上げるがその手からはすでに開放され背中を向けられていた。 不確かだと思う。髪から伝わった感覚も、自分の予想も。 酷く不安定で、不確かだ。 線引きは、曖昧でそして気まぐれで。 不安定な足場を、けれど歩き続ける。細心の注意を払いながら、ゆっくりと。 いつの間にか辺りは夜の闇に包まれていた。 2005/08/14 ブリーチ(白恋) |
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