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「なにやってんだよ」 見上げた先にいる人物の後ろにある空は、とても眩しかった。 目を細める一護の前に音もなく降り立ったそいつは、もう一度同じ問いを繰り返した。鋭い目つきで。 まるで脅しているようだ。 けして言葉にはしないけど、いつも胸の中でひっそり思う。 うだるような暑さの中。こめかみから流れ落ちた汗を袖で拭う。 「見てわかんねーかよ。水撒きだ。み、ず、ま、き」 そう言った一護の手には、言葉どおりホースが握られ水が周りの土を濡らしている。小さな虹もできている。 恋次の眉間の皺がますます深くなったのを、視界の端に捉えながらも無視をした。 なにせ暑いのだ。そんな中で会話などしたくない。 こんなことさっさと終わらせて、冷房でガンガンに冷えた部屋でアイスでも齧りたいのだ。自分は。 それにしても今日は本当に暑い。 まるで体の内側が燃えているようだ。小さな太陽を飲み込んでしまったみたいな暑さ。 「あー、くそっ」 投げ捨てたような言葉から、無言の拒絶を読み取ってくれたらしいことを悟る。 こういうときに、自分とこいつとは結構相性がいいんじゃないかと思う。 投げやりな言葉を出しても、それを気にも留めない。わざわざ優しい言葉を選ばずに、そして吐き出した後に後悔などもしなくていい。なんて楽なんだ。 たとえば、こんな風に暑い中相手をしなくてもいいのだから。 一護の手がホースと繋がれた水道の蛇口に伸ばされた。シャツの裾で顔を拭う。 「で、なんか用かよ」 そのとき今日はじめて、恋次をまともに映した。恋次の横顔に長い髪が影を作っている。 変わらない。夏なのに夏らしくなかったあのときから。 こいつを形成しているものは、何一つ。 「べつに。近くに来たから寄っただけだ」 用事なんかねーよ、と言った恋次と視線が合うとき、今みたいに微かに感じる違和感。 知らず知らずのうちに伸びていく身長に、どちらも気付きもしないけれど思い出せば2人の距離はもっと長かった。 乱暴な力で引き寄せて触れ合う。 こんなことを繰り返すほどには2人の距離は縮まった、けれど、やはり身長が数センチ届かないのと同じに、これ以上2人は近くならないだろう。 恋次は変わらなくても確実に時間は流れて、一護は変わっていく。 きっとあの夏を今のように懐かしいな、と思い出すように恋次のことも思い出すときが来るだろう。 少しの寂しさと痛さを感じながら。それでも笑って暮らすときが。 今、飲み込んだ太陽でさえあやふやな記憶になり、思い出すことさえ出来なくなるだろう。 それを知りながら触れ合う二人は酷く滑稽だ。 2005/08/14 ブリーチ(一恋一) |
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