それなら、死ぬほどやさしく甘えさせてくれればよかったのに



















ただただ、その身体をずっと抱きしめることしか出来なかった。



自分の身体が、指一本さえ動かないのだ。
まるで動くことを、時間が経つのを拒絶するかのように。
そして、涙は止めどなく頬を流れ落ちる。
なぜ涙が流れるのか、ほたるにもわからなかった。
わからず、そんな自分を自分自身疑問に思いながらも動かなくなった辰伶の身体を抱きしめて、涙を流しているのである。





どうして どうして



そんな言葉が、頭を埋め尽くす。



どうして どうして



この言葉だけが、周りを駆け巡る。




あんなに綺麗な笑顔を見せていた。
いつものように、口論もした。
はじめて、本気で戦ったのに。




どうして どうして




その身体が、激しく傾いた。
重力に逆らうことなく、辰伶は地面へと倒れた。
ほたるは、何が起きたかもわからず、その光景を見開いた目に映していた。
広がる赤い海。
やっと動き出した脳は、その事実を受け入れたのかどうか定かではないが、
漠然とした恐怖に似た感情は血液と共に体中を駆け巡り、震えを呼び起こす。
今にも座り込みそうになる膝を叱咤し、ゆっくりと辰伶の身体に近づく。
隣に跪き、震える指を伸ばしてその頬に触れる。
瞼に、唇に、触れているのにそこはもう、少しの熱も伝えてこない。
綺麗だと思っていたその顔は、まるで眠っているかのようで、そのことが余計に疑問を増やす。




どうして どうして どうして どうして どうして どうして




疑問で頭が隙間なく埋め尽くされた瞬間、糸が切れて動き出した人形のように、考える前に身体が動き辰伶を抱きしめていた。
それと同時に、涙が次から次へと溢れ出してきて、今もまだ流し続けているのである。










辰伶は、わかっていたはずだ。
こうなる事を。
それぐらい、俺にもわかるんだから、辰伶にわからなかったはずはない。
それなのに、なぜ行ったんだ。



なぜ なぜ なぜ なぜ 



ああ、それを言うなら俺も同じだ。
今、自分で言ったじゃないか。
心の片隅でわかっていたんだ。
なのに、一人で行かせた。
止めることも、声をかけることもせず。




辰伶も、声をかけてこずいつものように見送っていた。




ほたると辰伶の周りを、炎が包み込む。
熱い、痛い。
炎が肌を焦がす。
けれども、ほたるはその腕の力を緩めることはなく、じっとしたまま静かに泣いている。
辰伶は、もっともっと痛かったよね。
ほたるの、辰伶を抱きしめる腕の力が強くなった。
まるで、辰伶に甘えるようにほたるはその胸に顔を埋めた。
二人のすべてを、炎が包み込んだ。




















最後だけは、今までの分もたくさん甘えさせて










最後の最後まで気づかなかったこんな馬鹿な俺でも










あなたはやさしく受け入れてくれますか?














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