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16.確かなもの 「恋次。」 と大きくもなく小さくもなく、だけどなぜかはっきりと耳に届く声で呼ばれる度、電気のスイッチをパチンと押されるように俺の意識は目覚め視界が意味もなく彩られたように感じる。 それはこの人の周りの空気のせいか、俺の勝手なイメージかはわからないけれどもパチンとかならず透明になるのだ。それはこの人に抱きしめられ涙したときに目元に触れてきた指先の繊細を知ってからだ。その声も溜息も吐息さえもこの耳は聞き漏らさないかのように敏感になり、この肌はあの時の熱を忘れられずにいる。抱きしめられたときの強さも。 あの日からの俺と隊長の関係は何一つ変わっていない。今までのように必要最低限のことだけしか言葉を交わさないし、あの瞳が優しくなりもしない。相変わらず何を考えているかもわからない。それなのにその姿勢のまま時々触れてくるようになった。それは軽く、時には髪を梳いたり時には首筋を撫でたり、日によって違うけれど触れてきた後に必ず抱きしめられる。この心の内をすべて知っていてそれを繋ぎとめるかのように。緩く回す腕を解けない、俺の動揺を見透かしているかのように。指先を動かすことも抱き返すことも、瞬きさえできず見開いた瞳でただまっすぐと前を向いて、なぜこの人は俺を抱きしめるのか、なぜ俺に触れるのか、なぜ俺はこんなにも動揺しているのか、真っ白になった頭でぐるぐる考えることしか出来ず今だ何十回とされている行動になにも返せずにいる。優しく壊れ物でも扱うかのように優しく一撫でして離れていく時に見せる細くなった瞳の向こうで、あなたは一体何を思っている? 結局、考えてもなにもわからずただただ俺は黙ってしまうことしかできず、今日もまた、繊細な動きで触れてくる指先を振り払えずにいる。 泣き出しそうになる心は確かに今ここにあるのに。 2005/02/05 ブリーチ(白恋) |
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