04.初恋




















春が来た。
なんとはなしに見上げた空に花びらが舞っていて、そこではじめて気づいた。
そういえばここ最近、肌寒くなくなった。
時間が経つのは早い。
つい最近まで1人だと思っていたのに。




「そんなところで寝ると、風邪ひくよ。」




声の方に視線を向ける。
記憶に残っていたのより少し低くなったその音に、確実な時間の溝をいつも感じる。
自分に世界に対する、苛立ち。
上半身を起こすとマグカップを目の前に差し出された。その匂いからコーヒーだろう。
同じハートの絵が描かれたカップ。笑顔で差し出すソウマ。
昔の映像が重なる。あの時とは立場が逆だけれども。
穏やかだ。
カップを受け取り、思う。あの頃には緊迫した空気があったけれど、その時に戻ったような穏やかさだ。このまま続けばいい、と望んではいけないのに考えてしまうほどにソウマの周りの空気は変わらずに優しく、幼く、脆い。


「もう春だよ。はやいね、兄さん。」


再会したのは秋だった。
あの時は枯葉だったのが今は花びらに変わり、ぎこちなかった空気は溶けて消えた。
だけど残ったものがある。
理不尽な苛立ち、ハートのマグカップ。
砂糖もミルクも入っていないコーヒーを一口。温まるのは体だけじゃない。
同じカップを手に笑顔で話すソウマ。
思い出と変わらない姿でそこにある、当たり前のように。そしてまた俺は惑わされる、当たり前のように。それは季節と同じに繰り返される。





























兄弟愛です。
2005/03/26 神無月の巫女(ツバサ&ソウマ)




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