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君だけが大切なんだと伝えられたら、どれだけ楽になれるのだろう。 かり、という音が狭い室内に響いた。小さく深く、まるで今の僕のように。 指先で掴める色とりどりの金平糖たちは、ひとつ、またひとつと僕の口の中へ消えていく。 ああ、今また胃の中へと消えていった。 金平糖だけじゃなく砂糖を固めて作ったような菓子は、昔から好きじゃない。 口の中に無駄に広がるあの甘さが嫌いだ。体中がむかむかする。 なのになぜ金平糖を買ってしまい、食べているのか。 自分のことを誰よりも知っている僕は、迷うことなく答えを引き出せる。 甘い物好きで子供な弟の影響だ。 「だって、・・・可愛いじゃん。見た目が。」 いつだったか僕が「どうしてそんな甘いもの好きなの?」と聞いたとき、弟が怒ったような顔で言った。 弟の見た目と可愛いという言葉のギャップに、その時は声を上げて笑った。 お腹が痛くなって、いいかげんキレた弟が殴りに来て、それでも笑って。 最後には二人で笑った。 だけど僕は、もう声を上げて笑えない。 弟は笑えるかもしれないけど、僕は笑えない。 弟は覚えていないかもしれないけど、僕は覚えている。 昔は笑っていた些細なこと一つ一つ。消えてしまったものもあるだろうけど、絶対に弟よりたくさん覚えている。 かり、かり、かり。 この金平糖のように色とりどりの思い出。だけど笑えない。 見ている景色がぐにゃりと歪んで、渦の中に巻き込まれてしまう。果てのない思考の海へと。 だけれども考えないようにしているそれは、学校の中、部活中、帰宅路、いたるところで僕へと訴えてくる。そして僕を支配してしまう。 それが例えば、金平糖だったりする。 歯の奥で砕ける金平糖のように、すべてが消えてしまえばいいのに。 今僕が考えていることも、すべて綺麗さっぱりに。 かり・・・ むかむかする甘さに、僕は眉を顰めた。 つまり、重いのよ、ってこと。 2005/07/11 テニスの王子様(不二兄→弟) |
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