甘くて、痛くて、痺れるような感覚
まだ、この感情に名前をつけることは出来ない
扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは青と白の絵画だった。
人が寝てる。
それも、あの「月森 連」がだ。
足音を立てないように、そっと近づく。
そっと。
そっと。
どきどきする胸を抑えて。
長い睫
風に揺れる、薄い青色の髪が
胸を
酷くざわつかせる
覗き込んだその顔は、今まで見たことないほど幼く
あどけない表情をしていて。
なにか、
なんだろう?
じんわりと胸がいっぱいになる。
じくじくと胸の隅が痛みだす。
なんだろう?
この、少し後ろめたい感じは。
堕ちていきそうな感覚。
人形に息が吹き込まれたかのように、ゆっくりと瞼が開いた。
その時間は、一瞬のようで
長い時間だったようにも感じるほど、惹きこまれた。
彼に。
数回瞬きした後、彼は驚いたように目を見開いた。
「・・・な、なにを・・・・してる?」
こんな表情の彼は、見たことない。
また、不思議な感覚。
あたたかさと、痛さ。
赤い顔を、さり気なく腕で隠し、動揺を見せないように平静を装う。
「お、屋上に来たらね、月森くんが寝てたから。生きてるのかな・・・・って。」
少し上擦ってしまった声。
きっと、変に思われただろう。
いつもの表情に戻った彼は、いつものようにお決まりの溜息をついた。
「生きてるって・・・。俺の事をどう見てるんだ。」
眉を寄せ、頭に手を当てる。
その仕草さえ、絵になるほどで
胸を騒ぎ立てるのに。
なぜ、こうも平然としてるのだろう?
「別に・・・普通だよ。」
答える私の顔は赤いのに、彼の表情は少しも変わらない。
なのに、
ほら、まただ。
見つめたくる、その、透き通った瞳が。
時々、
何かを伝えようとするかのように
見つめてくる瞳。
視線が絡み合うのに、すぐ逸らされ
そして、
何事もなかったかのように。
いつもがはじまる。
「・・・・・くやしい。」
一人だけ、平然とするなんて。
「今、何か言ったか?」
そんなのずるいから。
いつか、
いつか、きっと――。
勢いよく立ち上がり、スカートの埃を払う。
「何も言ってないよ。―じゃあ、私行くね。」
今の声と同じように、明るく言える日が来たら
きっと、
きっと、
この気持ちに名前をつけて、伝えてみせるから。
甘くて、痛くて、痺れるような感覚
まだ、この感情に名前をつけることは出来ない
それまで
不公平なままで