夜に浮かぶ月だけが、闇からそっと覗いている。
秘 密
身体が酷く重い。
熱が出ているかのように呼吸がままならないし、視界が涙で霞んで見えない。
疲れた。
肉体的にも精神的にも。
「ソウマ。」
襖の開く音、そしてすぐに感じられる人の気配に一つ瞬きをした。
そこにはやっぱり兄がいつもの優しい表情を歪めていた。
「兄さん・・・。」
呼んだ声が少し掠れていた。
兄の眉が顰められる。
心配してくれている事実に、嬉しくなるのと同時に胸が少し痛んだ。
「もう、大丈夫なのか?」
起き上がる俺の背中に兄の右手が添えられる。
その乾いた感触にびくりと肩が震えた。
吐息さえも触れ合う距離。
月明かりに光る瞳。
指先はあと数cmで指先へ。
「へい・・き。」
だけれども動かすことも出来ず、視線を外すことも出来ず見つめる。
兄が微かに微笑んだ。
その拍子に揺れた長い髪を視界が捉えたとき、時が動いた。
重なる指先。
逸らされない瞳。
言葉は、溶かして。
背中に触れていた手はやさしく髪に絡んだ。
「今日は・・・満月だな。」
「だからこんなに明るいんだ。」
擽ったさに、一つ微笑みあう。
月明かりに照らされて浮かび上がる二人の影は、まるで恋人同士のようで。
手に力を込めた。
そうしないと、戸惑いにつられて兄の手を振り払ってしまいそうだったから。
「こんなのおかしい。兄弟で男同士で、こんな・・・・・。」
「なら、恋人になればいい。」
伏せた目蓋に吐息がかかり、目元に口付けられたことに気づいた。
それによって俯いていた顔を上げさせられる。
兄の表情は月明かりが眩しくて見えなくて。
「恋人に、なればいい。」
重なるだけの指先が握り締められ、髪を絡めていた指がさわりと首筋に動いた。
頬に髪が降って来て、思わず目を閉じる。
渇いた唇が額に触れた。