あと少し
あともうちょっと
合わせた手のひらにむけて吐く息が白い。
頭が痛くなりそうな寒さ。
けれど、あと少し経ったらやって来る彼のことを考えたら「まあ、我慢するか。」と思えるから不思議だ。
同級生や先輩たちに、恐いとか生意気だとか言われている奴だけど、本当はそんなことない奴だということを俺は知ってる。
真面目。
やさしい。
努力家。
まっすぐ。
日吉の好きなところを、指折り数えてみる。
(笑うと可愛いんだよなー。)
思い出し、一人にやける。
はじめて、笑顔を向けられたときのことを思い出す。
少し照れた、ぎこちない笑み。
あれがなかったら、きっとここまで想うことはなかった。
そこからは、崖から転げ落ちるようにどんどん好きになっていった。
―――思い出したら、会いたくなってきた。
早く来ないかな。
ポケットに入れてる携帯を取り出し、時間を見る。
さっき見たときから、まだ一分も経ってない。
がっくり肩を落とす。
わくわくする気持ちを抑えられない。
落ち着けようと、朝の清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。
そして、溜まりこんだ二酸化炭素を吐き出し目をつぶる。
ちりん ちりん
物音がしない世界に、鈴の音が響く。
あと少し
もうちょっと
目を開けると、そこには待ちに待った人が。
「おはよ、日吉。」
「はよ。」
少し照れた、ぎこちない笑顔で立っていた。