いつもは大人びた表情がふとしたときに見せる幼さだとか、触れた肌の体温が少し高いだとか
風に揺れる髪から清潔な石鹸の香りがするだとか、そんなのはここにいる理由にはならないだろう。




なぜこんな場所に二人でいるのか。
自分たちに不釣合いな甘いにおいやソースの香、楽しそうな家族連れやカップルたち。
その中を、何が悲しくて男二人で歩かなければならないのか。
「なあ、柳生。」
「なんですか?」
「・・・・暑いなあ。」
「そうですね。まあ夏ですからしかたないですけどね。」
そう言うわりに横目で見たこいつの顔は涼しそうなものだ。
ああ、本当に何が楽しくてこんな無口な奴と縁日に来なければならないのか。
何が始まりだったのか今となっては思い出せないし、どうでもいいが。
何の目的もなく人に流されるまま歩いていると急に隣にいる柳生が立ち止まった。
「どした?柳生。なんか食いたいもんでもあったか。」
ポケットに手を突っ込んだまま振り返った、そこには



息を呑むほど


冷たく


突き飛ばすような



「柳生。」
それに見知らぬふりをして、でも引き寄せられるように柳生に近づく。
いつもの表情に戻った柳生がゆっくりとこっちを振りむいた。
「見てください。」
「ん?」
男にしては細い指が、綺麗な動作で指差した場所を見ると
そこには水がいっぱいに入った青色の長方形。
赤と白と黒。
「・・・・金魚すくいか。懐かしいな。」
「ええ。・・・懐かしいですね。」
「やってみるか?おじちゃん、1人分。」
「仁王君?」
二百円と引き換えにアルミの器と薄っぺらな紙が張られた虫眼鏡のような道具を受け取る。
思考を振り切るように挑戦した金魚すくいは
昔の思い出のままに、一匹もすくえなかった。











その時見た横顔が
冷たく、突き飛ばすような、壁を感じさせたから


壊してしまいたくなった




















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