淡く色づいたこの想いは
君は、たくさんの生徒の内の一人に過ぎなかった。
何も違いなどない。
ただの生徒。
それ以上でも、以下でもない。
何も感じない、何も思わない。
「可愛い教え子」
君は、たくさんの生徒の内の一人に過ぎない。
彼女は、ただの生徒だ。
他の生徒と同じ、ただの生徒だ。
何度も何度も、自分に言い聞かす。
そんな行動を嘲笑うかのように、毎日学校で顔を合わせるたびに
君は胸を掻き乱し、それだけでは終わらず君という存在を意識に刻み付けていく。
君は、たくさんの生徒の内の一人に過ぎないのに。
彼女は、ただの生徒。
他の生徒と同じ、ただの生徒。
「可愛い教え子」
この言葉に、嘘偽りは一切ない。
けれど、一人の女性として愛しく思う気持ちも嘘偽りではない。
懸命に授業に耳を傾ける彼女も。
ただひたすらに、ノートをとる彼女も。
テストを手渡すときの、緊張した表情の彼女も。
友人と話すときの、笑顔の彼女も。
そのすべてが、愛しくて。
「氷室先生。」
そう呼ぶ彼女に、この想いを隠しなんでもないように振り返る。
その声さえも、甘く、痛く、耳に流れてくるというのに。
この胸に淡く色づいた想いを
今はまだ伝えることが出来ずに、ただひたすらに隠すことしか出来ない